戻りガツオ
No.287 / 2015年9月11日配信
初夏に「初鰹」として喜ばれるカツオは脂が乗っていないので、さっぱりとした味わいです。お江戸ではその昔、妻や子供を質に出してでも食えと言われたくらい人気があったといわれます。しかし、私は旬の脂が乗った魚が好きなので、やっぱりカツオも脂が乗った「戻りガツオ」のほうがダンゼン美味いと思います。
物心つくまでは、水産市場からはるか彼方の内陸地方に住んでいたため、あまり「生のカツオ」にお目にかかることはありませんでした。冷蔵・冷凍技術が進歩した今と違い、とくに赤身の魚は痛みが速いのか、当時は魚といえば「塩鮭(マス?)か塩サバ、いわしの干し物」が主流でした。ザリガニを茹でて食べていた頃の話です。
社会人一年目に、最初に職場の先輩に連れていってもらったのが郷土料理の店で、そこの一番の売り物はカツオのタタキでした。注文してもらうと、三角形の堂々としたおおぶりの刺身が現れましたが、皮が焦げていることでさらに食欲をそそります。ほんの少し前まで、即席ラーメンとキャベツで過ごしていた元貧乏学生は、軽いめまいを憶えました。
にんにくとしょうが、ポン酢で「爆食い」。あまりの食べっぷりに、店の大将も「九月に来たら、もっと美味いカツオが食べられるよ」とニコニコ顔。その九月のカツオが戻りガツオだったわけです。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』と戻りガツオ。近海の一本釣カツオ漁で、水揚日本一を誇る宮崎ならではの、この秋ベストな取り合わせです。