大学芋
No.285 / 2015年8月21日配信
さつまいもはアルマイトの大きな鍋で蒸すかゆでるか、枯れ落ち葉の中で焼いて食べるかが、私にとっての基本的な食べ方で、それが一番おいしい食べ方だと信じていました。あるとき、友人の家庭で黄金色に輝く「大学イモ」を食べるまでは、そうでした。その友人は我が家と違って、子供の目にも一目で経済力が分かる立派な家に住んでいました。
学校帰り、「うちに寄っていかない?」との誘いに乗って、友人の家に立ち寄った時のことです。若くてきれいなお母さんが手にしてきたのは、それまで自宅では口にしたことがなかったおやつでした。給食で登場するものとは雰囲気が全く違います。表面の飴色がテカテカと甘そうに光って、ゴマが振りかかっているではありませんか。
その友人の家では「砂糖たっぷりの厚巻玉子焼き」や「ミルクセーキ」をごちそうになったこともありました。その都度、母には話していたのですが、この時も自宅に帰ると「大学イモ」をごちそうになった経験を得意気に告げました。「あら、良かったわね」と、いつも母は笑顔で応えてくれます。夕食の煮付け用の菜っ葉を切る手を止めながら。
本当はあのとき、母は我が家でも、もっと息子達が喜ぶようなものを作ってあげたかったに違いありません。それが出来ない理由を子供なりに考え、理解し、我慢したつもりです。しかし、もっと我慢をしていたのは私よりも母のほうだったはず…。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』の原料になるさつまいもの収穫も始まるころ、そんな記憶も甦ります。