こいのぼり
No.274 / 2015年5月1日配信
温泉街を流れる川に、全国から集めた三千以上の鯉のぼりが泳ぐ姿を見た事があります。一、二匹(尾?)ならこの時期の長閑な趣ですが、これだけ数がまとまればもう、景観を圧倒的に支配してしまいます。熊本県北部の杖立温泉郷のゴールデンウィークは、子供連れや昔を懐かしむ観光客で毎年にぎわっているそうです。
自然溢れる里山と田植え前の畑が続く田園地帯。男の子がいる家庭の庭では鯉のぼりがゆっくりと風をはらみ、泳いでいました。初夏の青空が広がる頃、小学生の私は兄と郊外のクリーク(農業用水の掘)でフナを釣るために、よく出かけていました。あんなに大きいのが釣れると良いね。馬鹿っ、あれはフナじゃなくて鯉じゃないか、と兄の声。
大手の総合玩具専門店の今年の調査によれば、男の子を持つ親へのアンケートで、鯉のぼりを買う、又は既に買ったという人は48%だったそうです。五月人形と比べてその割合は低いのだとか。一軒家よりマンションに住む人が多くなったからでしょうか。庭がないのはもちろん、ベランダやバルコニーに設置できない規則があるのも大きな要因なのでは。
「お父さん、子供は私一人だけでよかったよね。5月の節句に出費が要らなくて」と、私の懐具合を読み切ってるような娘の声。イラッとしたので「俺の場合、可愛かった自分の少年時代に乾杯する日なんだよ、端午の節句は」と、うっちゃります。気持ちの良い初夏の夜は「あの鯉のぼりが泳いでいた田舎の想い出」に伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』と一緒に浸る事にします。