香り松茸、味しめじ

No.254 / 2014年10月11日配信

 昔に比べて「旬」が見えにくくなっています。裏庭で父が作っていた苺が赤く熟す頃、私たちは甘酸っぱい雰囲気の中に、初夏を見つけたものでした。今や苺も年間商品で、クリスマスとの絡みで「苺って、冬が旬なの?」などと、現代人が間違えてしまうのも無理はありません。温室栽培が普及し、マーケットの需要が一番高い時期を狙って出荷するのが当たり前の時代だからです。

 そうであれば、松茸も人工栽培等で出荷量を増やしてくれたら嬉しいのに、と勝手に思うわけですが、そうは問屋がおろさないようです。頑固に「旬の味覚」を守る高価な国産松茸は、残念ながら今年も口にすることが出来ませんでした。本当の美味しさも判らない貧乏学生時代に「たらふく食えた」一度っきりの奇跡を経験した後は、そう何度もありません。

 昔から香り松茸、味しめじ、といわれます。では、しめじを食べようではないか、とスーパーの野菜売場に出向いても、歯切れはよいけどさっぱりとクセのない味の「人工栽培ブナしめじ」が並んでいるだけです。あの松茸の味を凌駕する「ホンシメジ」は見当たりません。特に天然モノは旬の秋においても、ほとんど流通していないそうです。

 「お父さん、エリンギ買ってきたけど、バター焼きにしましょうか?アワビのステーキみたいで美味しいから」と家人がすすめます。「なんちゃって松茸ごはんがいいかも」と旬など考えたことのない娘が口を出します。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』には、人工栽培エリンギも美味しいけどやっぱり旬のはっきりしたものが……と、こんな無理は言えないんでしょうね、今の時代はもう。

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