精進料理
No.212 / 2013年8月11日配信
「揚げ物類に煮付け、昔はみ~んな家で作っていたよね。よく、そんな大変なことやってたわね、嘘みたい」と、家人がお盆のオードブルのチラシを見ながら口を開きます。家人の母親系統は大家族で、お盆の親戚寄り合いのときは大忙しだったそうです。料理屋に頼まず、すべての精進料理を姉妹数人で一気に作り上げていたのだとか。
「だから、お義母さんたち姉妹の家の味は良く似てるんだな」と、これまでに味わった各家庭の煮付けの味や揚げ物の姿が良く似ている理由が判ります。代々、母親から娘へ伝わってきた、血のつながりと一緒に伝わる暖かい家庭の味。複数の娘がいれば、その母親の味はさらに広がり、少しはアレンジされながらも伝わり続けます。
しかし、少子高齢化はいっそう顕著なトレンドになり、出生数は2007年より減少が続き、人口減が進行しています。人口問題研究所の将来推計によると2040年には、総人口が2010年に比べ約7割の自治体で2割以上減少し、65才以上の人口が40%を占める自治体が半数近くになるであろうとのこと。家庭の味を伝えたくても聞いてくれる子供そのものが少なくなっていくのです。
野菜の天ぷら、棒ダラの煮付けなど沢山の精進料理が並ぶ親戚勢揃いのお盆の宴会。「姉さん達の味もちっとも変わらんね」と、ステテコ姿の嬉しそうな叔父さん、伯父さん。そんな光景は姿を消してしまうんだろうな。いや、姿をもう消しているのかも。残念だけど、今夜は伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』を飲みながら、感傷に耽らなければなりません。