若葉のころ
No.202 / 2013年5月1日配信
イイ年をして、妙にセンチな気分になることがあります。まだ濃さの足りない緑の若葉が風に揺られ、初夏の日差しに輝く頃、なぜか懐かしいビージーズの爽やかな歌声を思い出します。ビージーズの曲では「小さな恋のメロディ」という映画にサウンドトラックとして使用されていた曲、「若葉のころ」が大好きでした。
ビージーズのそのピュアで美しい歌声は、無垢だった人生の季節を思い起こさせてくれます。小学5年生の時、仲間から「君のことを好きだって子がいるらしいよ」と伝えられました。その子は特に可愛いというわけではなく、あまり気にしたことがない子でした。「へ~、そう」と、私は一応、無関心を装いましたが、じわっと暖かいものが心の中に芽生えて来ます。
翌日からはその女の子からの視線がとても気になるようになりました。今から考えると、自意識過剰気味の、そのそわそわとした時間はとてもハッピーな時間でした。いつの間にか、仲間に冷やかされながらも、毎日の登校が楽しみになっていました。そんな気持ちの良い日が続く5月、「若葉のころ」に突然その子は転校してしまったのです。
一番の友達だった男の子は「トウモロコシのなる季節」を前にして、そしてこの女の子は「若葉の季節」に去っていきました。自然の美しい背景が、突然の幼い別れを印象的なものにしてくれました。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』のカップを傾ける日曜日の日暮れ前。窓から見える木の葉がさらさらと風に揺れています。こんな日は、これからジャズは止めてビージーズでも聴くようにします。