エイプリル・フール

No.199 / 2013年4月1日配信

 高2の春休みに友人が訪ねてきました。「こんなのが俺の靴箱に入っていたけど、おまえの名前が書いてあったんで、持ってきたよ」と小ぶりな封筒を手渡されました。「おまえ、モテるから羨ましいな」とその男子生徒は言い残して帰っていきました。学校の靴箱にバレンタインデーの恋文が入っていた古き良き時代の話です。

 私は家族に気付かれないように、女子の丸文字で書かれた手紙にそっと目を通しました。始業式が終わったら、渡したいものがあるので体育館の裏に来て欲しいと、書いてあります。出来れば、200円持ってきてくださいと、書いてあります。え??、なぜ200円要るんだろうと、少し不思議に思いましたが、疑うことをよしとしない私は始業式の日、約束の場所にノコノコと出かけました。

 胸の高鳴りを押さえながら体育館の角を曲がったところで、「やったー」という声が上がりました。私が来る方に賭けた友人がニコニコしています。その中の一人が「手紙渡した日、エイプリルフールだったんだよ!」と言いました。「これから、一緒にお好み焼き食べにいこう。お金持ってきただろ?」校門のそばではひらひらと桜の花びらが風に舞っていました。

 「女の子だったら、体育館の裏に来てくださいなんて絶対書かないわよ」と話を聞いた娘が言いました。「そこまで疑わなかったんだよ。そんな性格だったから、面白い経験が出来たんだ。まあ、現代の素直じゃない子には判らんだろうけどな」と私は皮肉をこめました。娘の反応と伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』の味が、今夜も私を幸せにしてくれます。

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