紅葉狩り
No.184 / 2012年11月1日配信
葉の緑色の色素は寒くなってくると分解され、かわりに糖分等を利用して葉の中に新たに色素を作ったりするそうです。それが紅葉の「色の変化」の原因なのだとか。紅く変わるのが紅葉だと思っていましたが、黄色に変色するイチョウ等も紅葉の範疇に入るようです。しかしその紅葉も、地球温暖化のせいで、時季が遅くなりつつあるのではとちょっぴり気がかり。
私が通っていた高校までの通学路に、大きなイチョウの樹がありました。枝振りが良く、紅葉の季節になると一面を黄金色に変えました。私はその頃、恋をしていました。見初めた相手とは同じクラスになることが出来ず、そのぶん少ない出会いに想いが募ってしまいます。その少ない出会いの場所のひとつがイチョウの木の下でした。
体育の授業で使った柔道着を教室に忘れ、慌てて帰宅途中の自転車をUターンさせたのです。ちょうど、偶然にもそのとき、紅葉したイチョウの樹の下を その娘が歩いていました。茜色の夕日が差す中、黄色に敷き詰められた路をしなやかな髪を揺らせながら。風に乗ってイチョウの葉が舞落ちています。私は息を止めて魅入りました。世の中にこんなキラキラした光景があるなんて。
「今年は紅葉狩りに行きたいわね」と家人が私に要求を掲げます。私はイチョウがあるところがいいな、と応えながら、レンジでチンしたギンナンの殻を剥きます。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』と一緒に味わうギンナンのやわらかな旨味は格別です。嬉しいことに、「イチョウの樹の下のあの娘」の笑顔が脳裏をかすめていきました。