小さな贅沢
No.183 / 2012年10月21日配信
11月初旬の立冬に向かって、秋もじわっと深まってきました。夜明けも遅くなり、近所の漁港で毎週日曜日の早朝に行われている「朝市」に出掛ける時間も、まだ未明の暗さが残っています。漁港の朝市は数十隻の船の水揚げ分を、漁師がそのまま直接市民に販売する「魚だけのマーケット」です。日曜日は市民のために船着き場が市場に早変わりするのです。
水揚げしたばかりの天然ものの魚介類はみな新鮮で、刺身用は活け締めにされています。ヒラメやカレイは大きいトロ箱のような容器で活きたまま売られています。「お兄ちゃん、このヒラメ千円でいいよ!」と漁師の奥さんから声をかけられました。フフッ、私もまだお兄ちゃんで通るのか。小振りなサイズだけど、刺身も十分に取れそうです。
気分を良くして、活きたヒラメを海水をはったクーラーボックスに入れます。電池式の小型エアーポンプの空気がぷくぷくと泡立っています。そのまま、午後まで活かしておいて夜の刺身にする予定です。ぷりぷりした薄造りの刺身を想い描いた瞬感、唾液が出てきて「日本人で良かった」などと、幸福感が頭の中を過激に支配してしまいます。
新鮮な天然ヒラメを伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』とカップリングで味わう豊かな時間、小さな贅沢。旬のヒラメを一番美味しいカタチでいただくための、早起きという小さな努力が始まる季節が訪れました。美味しいものを大切にする気持ち。それは間違いなく、私の人生を豊かに潤いのあるものにしてくれています。