残業おでん
No.151 / 2011年12月1日配信
多くの職場もそうだと思いますが、私の会社は12月の声を聞く少し前から、猛烈に忙しくなります。受注量が増え、仕事が錯綜します。今は仕事内容が変化してきたのでそうでもありませんが、若い頃、午前様は当然で、徹夜の日が続くことも。睡眠不足やストレスとの厳しい戦い。そんな時季、深夜の気持ちを支えてくれたものがありました。
出張から戻って来た先輩の手には、いくつものビニール袋がぶら下がっていました。時刻は深夜の0時に手が届こうとしています。やがてFM放送では城達也の「夜のしじまの何と饒舌なことでしょうか」のナレーションが聞こえてくる「ジェットストリーム」の始まる時間です。その先輩は打ち合わせ用のテーブルにぶら下げて来た袋をそっと置きました。
「みんな、腹減ったやろう?」。中から現れたのは発泡スチロールの容器に盛られた屋台のおでんでした。がんも、こんにゃく、牛スジ、大根、厚揚げ、卵など10種、30個以上もあろうかと思われます。独身だった私たちは先輩への気遣いもそこそこに、その深夜食をピラニアのようにガツガツと胃に放り込んだものです。
「『みんなよく来てくれるから』と、屋台の大将が千円で良いって、まけてくれたんだよ」と先輩は言いましたが、その千円は先輩の手出しです。そう多くない給料の中から買ってきてくれたおでんの温かさ。心に沁みます。数年後、私もそれに習って、深夜のアルバイトさんにおでんを買って帰りました。さあ、今夜は家だけど、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』にアツアツおでんです。