やさしく歌って

No.148 / 2011年11月1日配信

 ロバータ・フラックがしっとりと甘く切なく歌い上げる「やさしく歌って」。私がそうであるように、多くの人がネスカフェのコマーシャルソングとして記憶に残っているのではないかと思います。この歌でロバータは前年の「愛は面影の中に」に続いて、1973年も連続でグラミー賞に輝くことになりました。

 「やさしく歌って」の訳詞を見ると繊細な感情が独特な言い回しで表現されています。「彼の歌が私を優しく殺していくの」というフレーズの「殺していく」という部分にはドキッとしますが、メロディの素晴らしさや、彼女の温かい声が私に「歌詞とは違うイメージ」を優しく与え続けてくれます。若い頃、歌詞を理解できないまま、何度その声に癒され助けられたことでしょうか…。

 一緒に働いていた同僚が「鬱」という心の病にかかりました。私には話を交わしても「鬱」の症状がはっきりとは判らなかったのですが、本人はすでに身体にまで症状が出ていたのだそうです。倦怠感、胃腸の不調、肩の痛みなど…。そういえば、彼の企画発表の際の表情と声には、以前にはなかった「自信のなさ」を感じることもありました。

 秋が深まって温かいものが恋しくなる頃です。そんな季節の中で、治療中の生真面目な彼は怯え、震えているのかもしれません。「頑張れ!」とは言葉をかけられない電話の中のもどかしさ。そうだ、ロバータ・フラックの声が良いかもしれない。しばらくは、「やさしく歌って」でも聴いていてもらおう。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』を一緒にやるのはもう少し先のことになるでしょうから。

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