サクラが咲かない年
No.126 / 2011年3月21日配信
「合格発表は近くに住む親類の叔父さんに行ってもらおうか?」と母が私に話しかけました。「大丈夫だよ、ちゃんと大学から通知が来るから」と、万一不合格だった時のバツの悪さを思うと、たやすく母親の話に乗れるわけがありません。でも、気になるじゃないという母に負けて、結局当日は、大学正門にたむろしている合格通知屋に電報を依頼しました。
担任の先生から強く勧められたワンランク低いレベルの大学受験に、少々プライドは傷ついたものの、それで合格確率もぐっと上がり、過剰なくらい自信満々だった18歳の春。「出来ることなら、滑り止めにもう一校受けるようにしたら」という先生の声を無視して、「受験料も馬鹿にならないし」と志望校は一校だけに。
解答に「てこずった」という一抹の不安材料は残ったものの、落ちるわけがないと信じて電報を待ちました。しかし、やがて届いた電報は「サクラチル」。真っ白になった頭の中を担任の先生の言葉が響きます。「滑り止めのためにもう一校受験しておいたほうが…」。そこまで近づいていた大学生活がスルリと逃げていきます。この年、私にサクラは咲きませんでした。
桜の花が散り、葉桜になる頃、一本の電話がかかってきました。「河畔公園の桜並木を散歩しませんか?」の誘いに、思い悩んだ末、出かけました。「今年は散っちゃったけど、絶対来年咲くんだから」とクラスメイトの女の子。希望を無くさないようにと懸命に話しかけてくれました。想い出の彼女にそっと乾杯!伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」が今夜も旨い。