餅つき
No.117 / 2010年12月21日配信
「うちのパン焼き器では、たしか餅は作れなかったよな?」と、我が家のホームベーカリー機能を思い浮かべて後輩に言いました。後輩の家庭ではこの冬はホームベーカリーの器械を買ったとかで、初めて餅を作るそうです。「今年はついに手作りの餅ですよ。へへっ」と嬉しそうです。そういえば我が家の餅は、結婚以来、よそから買うものとなっています。
私が幼い頃の我が家では毎年12月29日か30日の早朝、まだ暗いうちから皆起きだして、農業を営んでいる母がたの親戚の家の「餅つき」に参加していました。母の兄弟の数家族が集まり、共同で行う「餅つき」は年の瀬の大きなイベントで、今でもしっかりと想い出として残っています。男達の手で重い臼がセットされ、重ねた蒸篭(せいろ)からは湯気がもうもうと立ち上っていました。
大人の男が代わる代わるに杵を持ち、懸命に餅米をつき上げていきます。杵打ちの間のわずかな瞬間にペタペタとリズム良く女性陣が餅を返していきます。寒い季節なのに、父やおじさん達の額には汗が流れていました。一生懸命眺めていた私に「ボクはまだ小さいから、もう少し大きくなってからだね」と、おじさんの一人が重い杵を少しだけ持たせてくれました。
最初の年、「これ美味しいよ、食べてごらん」と、伯母さんが蒸し上げたばかりの餅米を手に取ってくれました。餅になる前のアツアツのごはんは感動的な美味しさで、以後、餅つきはそれが密かな楽しみになっていました。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」を飲んでいると、懐かしい想い出が溢れてきて、温かくなります。幸蔵に感謝。この一年、おかげで心が枯れることはありませんでした。