線香花火
No.104 / 2010年8月11日配信
この夏の中元商戦まっただ中の時期に、「線香花火」がお中元ギフトになったというニュースを聞きました。面白いアイデアが次々に商品化される時代です。きっと、子供や孫が帰省で集まるお家への贈り物になるのでしょう。「美味しいもの」から「楽しいこと」へ、成熟するマーケットの消費のカタチは、様々なニーズへの対応を重ね、柔らかく膨らんでいきます。
「衆ちゃん。東京のおじさんが、花火セット持ってきてくれたわよ」と、母が8歳の私に向かって笑顔を見せます。部屋の片隅で宿題に苦戦していた私に、東京のおじさんは片手を「やあ」と挙げてみせました。前の年には青い野球バットをプレゼントしてくれたおじさんです。私は母に促されて、おじさんに「ありがとう」と大きな声でお礼を言いました。
私は少し不満でした。花火は大好きだったので、とても嬉しかったのですが、残念ながら私の大好きな打ち上げ式の花火が少なく、迫力のない線香花火が多いセットだったのです。女の子向けのセットじゃないのか、と思うたびに不満が成長していきます。お盆過ぎ、そんな私と兄を連れて、母は裏の空き地で「我が家の花火大会」を開いてくれました。おじさんの線香花火も「長持ち競争」で真剣になれ、思ったよりも楽しいものでしたが、小さい胸にはまだ不満がくすぶっています。
「衆ちゃん、はい、これ!」と最後の線香花火の前に、太い筒を手渡してくれました。懐中電灯の光に浮かび上がった文字はなんと「10連発」。母がちゃんと別に用意しておいてくれたのです。暗闇の中で母の横顔が線香花火の明りに輝いている中、私は満天の星空に向かって、迫力のある大きな音で発射を続けました。どうして母は私の心を見抜いたのだろう。お盆の夜は必ず、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」と一緒に大切な母の記憶を探る自分に出逢えます。