菜の花

No.86 / 2010年2月11日配信

 江戸時代の俳人、与謝蕪村が詠んだものに「菜の花や月は東に日は西に」という句があります。蕪村は菜の花のある情景が好きだったのでしょうか、「菜の花」が出てくる句がいくつもあるそうです。鮮やかな黄色の絨毯を敷き詰めたような菜の花が醸し出す、うららかな春の情景には蕪村でなくても心を惹かれます。しかし、食いしん坊の私が惹かれるのはその美しい菜の花ではなくて、今、2月の野菜売り場に並んでいる「食べる菜の花」のほうです。

 かすかな辛みとほろ苦さが味の特徴で、早春の息吹を感じさせてくれるのが食用菜の花です。菜の花が舌に感じるほろ苦さは、あくまでも爽やかな大人の味。夏のゴーヤのように強く自己主張する苦さではありません。冬の舌に春の期待をもたらしてくれる美味しい刺激です。私も大人になってやっと解ってきた味ですが、今はその旨さにはまりきってしまいました。

 肉や魚の料理に較べれば地味なものの、からし醤油で和えた菜の花は色鮮やかな季節のトップランナー。固ゆでの歯触り感がたまりません。この時期に、しみじみと季節を愛でながら一杯やるのには最高の肴だと思います。緑黄色野菜として栄養価も高く、ミネラル成分やビタミンCも豊富なので、もっと我が家の食卓にも登場させて欲しいものです、とブツブツ独り言。

 これから蛤やアサリなどの貝類も美味しい季節を迎えます。蛤の潮汁に菜の花をあしらったり、アサリのバター焼きに一緒に炒めたりと、考えるだけで唾液腺が緩んできます。菜の花が咲く前に、しっかりと食べておきたい食用菜の花。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の甘さと粋な味のコラボが出来そうです。ほら、もう春の足音が聞こえてきそうじゃありませんか、菜の花の黄色い春の足音が。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です