晩秋の食卓

No.41 / 2008年11月11日配信

 夏の続きが終わるとすぐに冬が始まるという、奇妙な季節感覚が定着してきました。なんだか秋が夏に食い尽くされている感じです。気を許したら、コスモスや紅葉の秋があっという間に通り過ぎてしまいますね。秋大好き派の私としては、現在の地球環境が向かっている方向性に賛成はできません。

 最後の命を赤く燃やして散っていく、樹々の風景。すべてが大地に還っていく足音の静けさ。私たちは「もののあわれ」を季節の中で自然に学び取っていました。情緒を育む秋という季節の存在価値は日本人にとっては計り知れないものがあります。休日にはビル街から離れて、もっと雑木林と話をする時間が必要なのかもしれません。駆け足の秋を見逃したくなければ、注意深く見つめていなければならないという時代になってしまいました。

 季節はつかの間の晩秋。この季節になれば、心と体が強く求めるのは温かい食べ物です。数多く存在する「暖まる料理」の中でも、やっぱり鍋料理にかなうものはありません。私は寒い季節の最強の料理だと確信しています。いろいろな種類を楽しめるのが鍋料理の良いところで、飽きることがありません。地方で昔から愛されてきた伝統の鍋料理から、このところ話題になっているカレーの鍋料理まで、本当に様々です。

 野菜もしっかり食べることになるので、健康にもいいのダ、とメタボの身体も賛同します。しかし、私にとっての本当に大切な公式というのは、[鍋料理+伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」=幸せ]だということ。「幸蔵」の姿が見えない鍋のシーンはつらいものです。ワインも合うわよという連れ合いの言葉にも、一度だって縦に首を振ったことはありません。私は自分のための幸せな「食のシーン」づくりには、けっこう頑固なのです。

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