椎の実
No.39 / 2008年10月21日配信
半ズボンをはいて走り回っていた頃の、深まる秋の想い出は「椎の実」です。小高い丘のような小学校裏山に何本も生えていた椎の大木は、子供達のヒーローでした。樹々の間のスペースを利用しての陣取り合戦、缶蹴りは楽しかった想い出です。遮るものが少ない学校の運動場ではドッジボールやソフトボールは出来ますが、陣地になる樹や隠れる場所が必要な遊びは出来ません。そんな遊びの場を提供してくれたのが椎の木の裏山だったわけです。
私たちは夏の終わりの夕焼け時、幹を触っては、早く椎の木にドングリが実らないかなと小さな胸で願ったものです。朝夕の風がヒンヤリし始め、裏山の石段に植わっている桜の葉が紅や黄色に色づき始める頃には、もう待ちきれない思いに溺れてしまいそうでした。「昨日、椎の実が落ちてた」という友達の一声で、地面に落ちたほんの少しのドングリを目指して、放課後の校門を脱兎のごとく飛び出していました。そんな姿を思い浮かべては微笑ましく、つい口元が緩んでしまいます。
僕たちは半ズボンの両ポケットに椎の実をいっぱい詰めて、家路を急ぎました。途中、我慢できなくなった時は二つ三つと、生のまま齧っていました。家で母によく煎ってもらいました。栗のようにはほっこりと甘くはないけど、懐かしい自然の甘みがあります。それはもう、かけがえのないおやつでした。
椎の実は農産品直売所で売っているかもしれません。週末は郊外に出かけてみようかな。煎った椎の実の皮をポリポリ剥くと、秋の夜長が懐かしい想い出でいっぱいに満たされそうです。もちろん、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をやりながら、ですよ。