スズメの子
No.569 / 2023年7月1日配信
「雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る」と小林一茶が俳句を詠んだのは江戸時代。今は車社会なので、そんな風情はありませんが、この6月、家の近所を車で通りかかると、道の真ん中にスズメが横たわっていました。車を止めて眺めると、大人になる前の小さなスズメでした。手に取ると、少し温かさが残っていたものの、目は固く閉じられています。道端の草むらにそっと移しました。
小林一茶は松尾芭蕉や与謝野蕪村と共に江戸時代を代表する俳人です。スズメ関連では「我と来て 遊べや親の ない雀」もありますが、調べてみると一茶は子供や小さな生命への慈愛あふれる俳句を中心に2万句も作ったそうです。一茶は長野県北部で生まれたそうで、小さい頃母を亡くし江戸へと奉公に出された経験が、弱きものや小さな命に対する彼の感情に影響を与えたのでしょう。
まだ私が小さい頃、兄が友人と裏庭でスズメ取りの仕掛けを作っていました。米粒をおとり餌にして、周りを煉瓦や石で囲み、スズメが仕掛けの枠内に入った時、素早く紐を引っ張るとパタンと扉が閉まり、逃げ出せなくなる仕組みです。その成果内容は忘れてしまいましたが、「酒に浸けた米を雀が食べると、ふらふらと千鳥足になるぞ」の声だけはしっかりと記憶に残っています。
スズメと絡んだ頃が懐かしいですが、最近はベランダでチュンチュンと鳴く姿をそっと眺めるだけ。ベランダに干していた鯵の一夜干しを盗んだ憎たらしいカラスと違って、可愛いものです。どんよりした梅雨空の下、あのスズメではなくツバメが滑空しています。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」を飲る時間まではもう少し。あのスズメ、もう少し発見が早かったら助かったかな?ごめんな。