エミール・ガレ
No.566 / 2023年6月1日配信
九州国立博物館で開かれているアール・ヌーボーのガラス芸術の展示会に出向きました。アール・ヌーボー(新しい芸術)はフランスを中心に巻き起こった革新的な芸術の創作運動です。19世紀末から20世紀初めにかけて黄金期を迎えたのですが、その誕生に影響を与えた日本の浮世絵や工芸品による「ジャポニスム」には、日本人として何か誇りを持てるような気分の良さを感じます。
そして、その欧州のアール・ヌーボーの美しい美術品に、回り回って今度は私たちが心を奪われることに。初めて観る作品なのに、なぜか既視感を覚えてしまうのは、やはりジャポニスムの影響なのでしょうか。今回はエミール・ガレとドーム兄弟というガラス工芸分野におけるアール・ヌーボー牽引者達の作品展なので、植物や昆虫などの自然讃歌が色濃く、その創作物に圧倒されます。
ガラス面に描かれた植物はもちろん、立体的なセミが貼り付いているようなガラス壺もありました。ガラス工芸にはさまざまな工作道具やガラスを溶かす化学薬品を使用するなど、イメージを具現化するための加工技術の凄さにも驚かされます。特にガレの作品には見るものの目を釘付けにし、心を鷲掴みにする「美しい大胆な発想」が。個人的にはドーム兄弟よりガレに惹かれてしまいました。
色ガラスの起源は主にエジプトで、紀元前16世紀ともいわれます。私が何気なく、そして毎日使ってるガラス容器もその歴史や工芸文化を知ることで、使用感にも変化が出てきそうです。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」を注いだグラスにも「美しい透明の光彩」を感じることができるかもしれません。美味しいと美しいの融合、その深み。エミール・ガレにも乾杯、豊かな時間をありがとう。