土を喰らう十二カ月

No.548 / 2022年12月1日配信

 土を喰らう十二カ月。この映画に沢田研二さんや松たか子さんが出演されて、とても魅力的にその役柄を演じられていました。沢田研二さんはグループサウンド「ザ・タイガーズ」時代からジュリーと呼ばれ、切長の目でファンの心を奪っていました。「君だけにー」と観客を指差して唄えば、その瞬間、会場は若い女性たちの「きゃー」という悲鳴ような声で溢れ、失神者が続出したものです。

 男の私が見ても男の色気、いや人間の色香みたいなものを持った方でした。歳を重ねた今もそれは変わらず、映画の中で収穫したばかりの里芋を流水を使って指だけできちんと洗い流す場面や、煮物を皿に移すシーンのひとつひとつにも、そんな色気を感じさせてくれました。ファンの方ならいっそう、その場面のナイーブな指や腕の動きのひとつひとつが魅力的に見えたはずです。

 この映画は作家の水上勉さんが1970年代に記した料理エッセイをもとに作られ、旬を食べる(自然と共にある恵みと生きる)ことの豊かさが表現されています。二十四節気のスクリーン表記には心が安らぎ、土、作物、人との繋がりの中で感じるられる季節感が秀逸でした。その「美味しそうな瞬間」には心を奪われ、チャーミングな松たか子さん、飼い犬「さんしょ」の可愛らしさも筆舌ものでした。

 私も日本の四季が持つ、かけがえのない豊かさにもっと思いを寄せなくてはと思います。スピード感あふれる時代だからこそ、もっとゆっくり、もっとじっくり。昨晩も伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」を飲んでいると、映画の場面が思い浮かびました。あぁ、ほうれん草の胡麻和えも筍の煮物も美味しそうだったなぁ。その料理には美味しい色香が宿っていました。ジュリーにも負けない色香が。

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