ススキのかんざし

No.543 / 2022年10月11日配信

 「浴衣の君はススキのかんざしー」で始まる吉田拓郎さんの曲「旅の宿」がキリッと乾燥した秋の空気によく似合います。この「旅の宿」は学生になりたての頃、よくギターの練習をしながら歌っていました。ハーモニカホルダーでブルースハープを首にぶら下げて、上手くもないのに格好だけは一丁前でした。この曲は複雑ではないコード進行でしたが、サビが効いたコード移行部分が大好きでした。

 学生運動で荒れた時代も終わりを告げ、歌づくりもプロテストソングからラブソングなど私的な生き方を歌う曲へとだんだんと変わっていきました。この旅の宿(岡本おさみ作詞)では「浴衣の君はススキのかんざし」以外にも「ひとつ俳句でもひねって」「上弦の月だったっけ」などの季節を印象付けるものや和のテイストがたっぷりの歌詞が新鮮で、詩的な感覚が私の心に響いたものでした。

 そんなススキの季節ですが、イメージとして残る風景として、福岡県の北九州市にある日本三大カルスト地形の一つに数えられる「平尾台」があります。みどりが広がる台地に乳白色のススキが風にそよぐ様は、旅の宿の歌詞に負けない風情です。広いカルスト台地は石灰岩の白い岩肌が羊の群れのように露出していて、それとススキを横目にしながらのトレッキングは楽しいものでした。

 山ガール(?)を妻に持つといやでも山歩きに連れ出されるのが辛いところですが、歩き終わると確実に自然の風景に癒されていたので、文句は言えません。さらに、帰宅してからひとっ風呂を浴びたら、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の一杯がやけに美味しく感じられます。山から帰りに見た夜空に浮かぶ綺麗な月を思い出しながら、肴は里芋の煮っ転がし。旅の宿ではなく、自宅ても幸せです。

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