ニューシネマ・パラダイス

No.520 / 2022年2月21日配信

 久しぶりにニューシネマ・パラダイスを観ました。パラダイス座の映写技師のアルフレードの愛情溢れる子供との付き合い方とトト少年の絡み合いが楽しくて、その分、最後の回想シーンでは涙が止まらなくなりました。この映画の完全版は恋したエレナとの再会やその別れが描かれ、より深く人生を俯瞰できますが、イタリア映画は、どうして子役があんなに素晴らしい演技をするのでしょうか。

 第2次世界大戦終了直後の何もかもがなくなってしまった環境下で、村で唯一の娯楽施設だったのは映画館。ラブシーンがカットされているアメリカ映画にブーイングを送る観客。教会の禁欲的な倫理観下なのに、キスシーンに期待をかける村の人々。日々の生活の中で映画がもたらすものは大きく、少年トトの映画に対する情熱は当時の社会背景が生み出したものだともいえます。

 子役で思い出すのは高校時代に見た「自転車泥棒」というイタリアのモノクロ映画を思い出します。戦後の混乱した社会がリアルに描かれていました。仕事をするためにやっと手に入れた自転車を盗まれて、もがく一家。止むに止まれぬ中、今度は自転車泥棒をやり返す父親の気持ち。息子のブルーノの役をした子役の演技がうまくて涙を誘います。切なくてやりきれない映画として心に残っています。

 私たちは子供の時の純粋な気持ちを失くしながら大人になっていくのかもしれません。それは仕方のないことでしょうが、映画の中の少年たちは忘れたものを思い出させてくれます。だから大切なものを忘れないように、ニューシネマ・パラダイスに流れるエンリオ・モリコーネのテーマ曲とそのシーンをなぞりながら、今夜も伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」とピュアな時間へ向かうのです。

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