ひび割れ

No.516 / 2022年1月11日配信

 スマホの指紋認証が効かなくなり、いちいちパスコードを打たなくてはスマホが開かなくなりました。昨年の冬もそのような傾向でしたが、冬になると指先の感触が変になります。人差し指を注意深く見てみると、指先の指紋が薄くなっていてつるんとしています。その消滅気味の指紋の代わりに、はっきりした縦皺が寄っていました。これじゃあ、さすがのiPhoneも当人識別ができないわけです。

 子供だった頃のように、霜焼けで手の全体が腫れているわけではありませんが、柔らかい布などを触るとガサガサと引っかかります。その原因は考えるまでもなく、炊事・皿洗いにあります。年末から何回も洗剤や水を使うような生活スタイルになっているので、手(特に指)の脂肪分が抜けてしまったのです。キッチンに立つ「主夫」を演じると、家人たちは喜びますが、やはりその皺寄せも。

 昔は私の家でも正月が終わり、1月の11日にもなると、年神様に供えた鏡餅を割って、ぜんざいにして食べる習慣がありました。それが終わるとふわふわした正月気分に終止符が打たれ、既に始まっていた3学期もよりリアルなものに。さて、その鏡割りの日を思い返すと、出刃包丁で硬くなった餅を切る母の手は真っ赤に腫れていて、硬い鏡餅に負けないようなひび割れ状態でした。

 小学生だった私は母のそんな手を「友達の若い母親のつるんとした白い手」と比べては残念がったり、今思えば親の苦労がわからない自己中な子供だったのでしょう。まあ、子供だったから仕方のないことかもと、ガサつく指を眺めながら苦笑い。さあ、今夜は焼いた餅に「砂糖醤油」をつけて、伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の肴にしよう。心のひび割れだけは起こさないようにしなくては。

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