鼻先にんじん
No.507 / 2021年10月11日配信
毎日睡眠不足で夜間も仕事に励んでいた頃を思い出します。年末に向けて印刷物の受注が増え、若い私たちはその仕事量をこなすのに必死で戦っていました。目が半分閉じかけているデザイナーがペンを持つ手を止めて「ねぶたか(眠たか)祭りバイ」と、みんなのウケを狙いました。瞬間、青森のねぶた祭りが頭に浮かんだのでしょう。「それ30点やな」と、先輩のコピーライターが冷たく評価。
そんな深夜残業中、電話が鳴りました。鳴り響く音に負けた同期入社の友人が渋々受話器を挙げ、近くの先輩に向かって「ウルトラマンさん、お電話です」。なんとその先輩はスッと立ち上がって、「ジュワッキ」と言いながら目の前の受話器を取りました。電話が終わった先輩に対して、みんなから拍手がわきおこりました。辛口のコピーライターの先輩も「うっ、よくできている」と高評価。
そんな折、得意先から3社競合となる「企業広告」の競合コンペが入ってきました。課長から「各チームでそれぞれ広告案を出してくれ。採用された案については『支店長賞』が出るそうだ。今週いっぱいで作って欲しい、わかったか」と、半ば強制的です。私たちは僅かに残る肉体と精神の力を振り絞り、馬になった気持ちでその「鼻先にんじん」の仕事に取り掛かったものです。
家人が胡麻をまぶして人参のきんぴらを作ってくれました。とても美味しかったので人参のことを調べてみると、美味しい旬の時期は10月から12月のようです。香ばしくて甘みのある人参のきんぴらとスッキリうまい伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」の取り合わせもバッチリ。まさか、家人は私に「もっと働け」という意味で、人参の料理を目に前に差し出したのでは?うっ、少し震えました。