新撰組・斎藤一
No.354 / 2017年7月11日配信
幼い頃、「新撰組血風録」という新撰組を扱ったテレビ番組がありました。おぼろげな記憶の中でも、ただただ土方歳三の格好よさと肺病を患っていた沖田総司の姿だけはなぜかはっきりしています。そして、京都のまち中で起こる様々な事件の記憶は蒸し暑い夏に結びつくのです。調べてみると、ドラマスタートは7月11日。扇風機の風に当たりながらテレビを見ていたはずです。
私の中では、斎藤一は土方や近藤、沖田のようなハッキリとしたイメージがありませんでした。しかし、滅法強かったという話を聞き、この際、読んでおかねばと本を入手。一刀斎夢録(浅田次郎/文春文庫・上下巻)です。物語は明治時代も終わりを告げようとする頃。近衛師団の若い中尉(剣道の名手)は、一刀斎という老人から過去の話を毎夜聞かされることになります。
その老人こそが新撰組三番隊長の斎藤一でした。最強とまで恐れられたその剣は左利きの抜き打ちで、抜く手も見せずに刀を一閃させたとか。極限の闘いに自らの哲学を持ち、幕末を駆け抜け、生き抜き、明治の世では西郷隆盛の軍とも闘うのです。この物語ではあの坂本龍馬を暗殺した張本人として描かれ、あの龍馬の暗殺シーンなどは、思わず息を飲んでしまいます。
さすが浅田次郎さんです。史実をベースにしてはいるけど、読む人を熱くさせてしまうフィクションの「描く技術」が凄いところです。読後はやっぱり熱くなった心を鎮めなければなりません。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」のグラスにたっぷりと氷を注いで、一口やりながらそのシーンを回想します。う?ん、とてもいい夏の夜です。本の続きにまた手が伸びます。