台風の夜
No.283 / 2015年8月1日配信
今年は台風の当たり年かもしれません。沖縄、奄美、九州のルートは、一昔前までは「台風の銀座通り」などと言われていましたが、最近はそういった表現を目にすることは少なくなりました。 そういえば、1,000年前(?)位の文学「枕草子」に登場していた「野分」といった自然観たっぷりの表現は素敵でしたね。
地球温暖化に伴い、台風の凶暴化が指摘されますが、振り返ってみれば、幼いころもけっこう大きな台風に見舞われていたような気がします。窓ガラスが割れないようにバツ印に木枠の補強をしたり、大人はすることがイッパイあって大変そうなのに、私と兄は学校が午後から休校になり、なぜか冒険旅行に出かけるような気分。
風雨が強まった夜は、当たり前のように停電タイム。豆球の懐中電灯で照らしながら、仏壇の横の引き出しから大きめのロウソクを取り出します。しっかりと戸締まりをしているはずなのに、なぜかロウソクの炎が大きくゆらめくところが面白いところです。赤く照らし出された家族全員の顔が、1本のロウソクを囲んでいました。
当時の住宅事情は「風通し?」のよい家庭環境を築き、顔を寄せ合える家族を作り出しました。しかし、今の我が家にはもうあの白いロウソクはありません。「顔を突き合わせて台風をしのいだ家族」は、もう「野分」のように貴重な昔話となりました。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎『幸蔵』を口にする夜、ついそんなことも思い浮かべてしまいます。