夢見るボーナス
No.8 / 2007年12月11日配信
忘年会シーズンともなると、新聞に大きなチラシがドッサリと折り込まれることが多くなります。百貨店、ショッピングセンター、商店街が活気づく歳末商戦もまっただ中。薄型大画面のカラーテレビ、話題の新OSを搭載したノートブックパソコンがチラシの上で私に向かって微笑みかけます。ついにその時期がやって来たのです。サラリーマンの私が唯一バラ色の夢を見れる時期、多くはないけど「年末賞与」。
フェアウェイをとらえることのない相性の悪いドライバーよりも、穂先の折れた釣り竿を買い直すほうが先だな。今度こそインターラインのカーボンロッドだ、などと口走り、その「少年の瞳」に戻れる瞬間、気分はもう最高潮に。その他、手ブレしない800万画素位の高画質デジカメも欲しいし。そうだ! 年賀状作りに今年こそ複合機能プリンターも必要だし…。少年の夢見る瞳には際限がありません。家電量販店や釣り具店のチラシをながめ、パソコンも立ち上げ、インターネット情報の上を飛び回り、気がつくと午前2時。やっとの思いで「D社の釣り竿」と35度のかめ壷熟成芋焼酎「半ぴどん」をボーナスで買うことに決定。
翌朝、睡眠不足でキッチンに降りていくと妻がなんだか浮かない顔です。「最近調子が良くなかったんだけど、冷蔵庫が死んじゃったわ。20年以上も使ったんだし、寿命だったのね、きっと」。「ハハハ、釣り竿が…」と逃げていく夢に虚ろな笑い声をたてる私。猫のポン吉が不思議な顔をして私を眺めていました。