アール・クルー
No.457 / 2020年5月21日配信
好きな音楽をかけて仕事ができるなんて、今思えば幸せな職場だったのだと思います。学生気分の抜けない私たちは、歌謡曲好きの課長が退社した後はラジカセのボリュームを上げて残業をしていました。音楽は生活の一部と信じる20代のデザイナーやコピーライターの若い集団です。ある日、大滝詠一好きの友人が持ってきたのが「アール・クルー」のベストアルバム。
出だしが印象的な1曲目「クレイジー・フォー・ユー」のアコースティック・ギター(ナイロン弦)の柔らかい音色が心をくすぐります。ジャズというより当時流行っていたジャズ・フュージョンでした。できれば、深夜ではなく春の陽だまりでまったりと聞きたい曲です。そのアルバムはストレスがたまる現場から私たちを救ってくれた「魔法の薬」のようでした。
深夜0時が近づいてくると、ラジカセをFMラジオに切り替えます。ジェット・ストリームという番組が始まるからです。「夜のしじまに」で始まる城達也さんの渋いナレーションが、私たちの「午前様」突入、残業第二ラウンドの合図でした。「腹減ったなぁ」の誰かの一声で、みんな集まりじゃんけん大会。10人位の「吉野家の牛丼(味噌汁付き)」をかけての大勝負でした。
勝負に負けると悲惨です。基本的には一人で深夜の買い出しとなり、もちろん全員分の牛丼代を一人で支払わなければなりません。大雨の日の買い出しは最悪でした。負けるともう気分はアール・クルーどころではありません。心も「荒れ・狂う」でした。久しぶりにアール・クルーを聞いています。伝承かめ壷造り・本格芋焼酎「幸蔵」をやりながら、今夜は気持ちよく。